映画に見る博多節と三味線の奇縁

 福岡県を代表する三味線を使った民謡の一つに「博多節」があります。俗調と正調の二種類がありますが、「実おもしろや節」というのが明治5年ごろに流行り、博多では「博多帯締め筑前絞り」の歌詞で博多節とも言われました。明治8年ごろにドッコイショというはやしを入れて俗っぽいものになり、全国に流行しました。これを門付けが唄うようになってから、乞食節といって忌避されたようです。俗調になる前の歌は上品だったとして博多の芸妓連が大正10年に博多節試演会を開き、正調博多節となったとされています。

 

 ですが、古調博多節も独特の哀愁を漂わせた味わい深い曲です。泉鏡花の小説「歌行燈」では流しの三味線弾きとなった主人公が桑名(三重県)で弾き語りをするシーンがあります。二度映画化されていますが、巨匠・成瀬巳喜男監督作の初代作品では、主演の花柳章太郎が三味線を弾くシーンがあり、この古調の弾き語りを聴くことができます。

 

https://www.youtube.com/watch?v=gEgfZ7Ixvsc

 

 二作目の市川雷蔵主演の作品では、なんとこのシーンに藤本流初代家元の藤本琇丈師が三味線、米谷威和男師が唄い、市川雷蔵の吹き替えをしています。当時内弟子であった藤本秀康も同行したという縁があります。東京・神田にある当三味線教室では当時の貴重なエピソードを聞きながら、なかなか習う機会の少ないこの古調博多節も稽古しています。是非民謡の歴史をご体験ください。